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校長先生のお話

第68回卒業式 式辞
2022-03-01
 弥生を迎え、余寒もようやく薄れ、樹木の蕾も膨らむ頃になりました。本日このように第六十八回卒業証書授与式が挙行できますことに大きな喜びを感じています。今年は、まん延防止等重点措置期間中に伴い、縮小開催となりましたことお詫び申し上げます。 
 保護者の皆様、お嬢様方のご卒業おめでとうございます。これまでの出来事や様々なご苦労などが去来し、本日の成長したお嬢様方の姿に感慨一入のことと存じ上げます。多感な大切な時期を、本校の教育に委ねていただき、誠にありがとうございました。本日を持って、本校を巣立って参ります。民法改正に伴い、来月から成年となりますが、もう暫く温かく見守ってやってください。 
 燦華の会の皆さん、卒業おめでとうございます。本日は、82名の仲間と過ごした思い出の校舎に別れを告げ、新たなる扉を開き未来へ向う旅立ちの日です。
 かけがえのない友と喜びや悲しみを分かち合いながら駆け抜けた高校生活、多くの貴重な体験を積み重ねてきました。カナダへの修学旅行・運動会・聖母月・クリスマス会、そして、伝統の灯を先輩から受け継ぎ後輩に受け渡した光の伝達式など多岐にわたる本校独自の行事や学校生活を通して、本校が目指す「豊かなかかわりを築いていく力」や「奉仕する心と実践する力」を修得することができました。
 振り返ってみると、皆さんの高校生活は、新たな大学入試制度や新型コロナウイルス感染症に翻弄された三年間でした。大学入試制度に係る国の方針が二転三転し努力が報われないこともありました。そして、コロナ禍の猛威にさらされたこの二年間、思い出となるべき記念祭バザー等の行事の中止・縮小開催を余儀なくされました。まさに、翻弄され艱難を強いられた高校生活でした。こうした中でも、明るく燦燦と輝きながら華やかに学校生活を送ってくれた皆さんの姿は、とても心強く印象深いものとなりました。
 高校生活最後の一年は、東京オリンピック・パラリンピックの一年延期に伴い、夏季・冬季と二度開催されるという歴史的な年度でもありました。
 多くの感動をもたらした夏季大会に続き、冬季北京オリンピックでも、女子カーリングやスピードスケート高木美帆選手等女性アスリートの活躍が私たちを魅了致しました。とりわけ、高木選手は、今回4種目で金・銀メダルを獲得致しました。前回の平昌オリンピックの3個と合わせ、計7個のメダルを獲得し、オリンピックでの日本人メダリスト過去最多5個を上回る大活躍で私たちに多くの感動を与えてくれました。「女子パシュート決勝金メダル直前の最終コーナー。隊列の最後尾を滑っていた姉の高木菜那選手がバランスを崩し転倒。その瞬間、連覇の夢はついえた。呆然と仲間のもとに戻ってくる姉のもとへ、妹の美帆が真っ先に駆け寄る。菜那の涙が止まらない。全員から慰められ、肩を抱かれ、世界一の『チームワーク』を証明した。」そして、「美帆選手は、会場で日本を応援してくれた皆さんのところへ挨拶に行き、カナダ選手に祝福に行き、涙をこらえて気丈に振る舞っていた。会見でそのことを聞くと、『姉がこのような状況だったので、妹の私がしっかりしないといけないと思いました。』と話していた」と報道記事で紹介されていました。
 このような恕の心に満ちた人間性にも学ぶべき点は多くありますが、今日の高木選手の活躍の裏には、挫折から這い上がった強い精神力とあきらめずチャレンジし続けたGrit(やり抜く力)を感じています。
 2010年バンクーバーオリンピック、僅か15歳で期待の星として代表に選ばれました。結果は、1000m35位で最下位・1500m23位と大変不本意なものでした。大きな挫折を味わい、大学時代の2014年ソチオリンピックでは代表に入ることさえできませんでした。それでも,夢を捨てず練習を積み重ねた末につかんだ2018年平昌で3個、そして、今回の北京で4個のメダル獲得。この生き様は、私たちに多くの示唆を与えてくれています。大きな苦難を乗り越え、夢に向かってあきらめず努力していく姿勢や他者に対する恕の心、皆さんもこれからの人生の学びとしてください。聖書も、苦難は希望に至る入口であることを教えてくれています。
 また、国際平和を揺るがす「ロシアのウクライナ侵攻」が5日前に開始されて以後、危機的な展開を見せ、多くの尊い人命が失われたことが連日報道されています。この悪化した情勢を懸念されたローマ教皇は、「私と同じように、世界中の多くの人々が苦悩と不安を感じています。皆の平和が再び一部の人々の利害のために脅威にさらされています。」と深い悲しみを表されました。そして、明日3月2日を祈りと断食の日とするよう呼びかけられています。その祈りの言葉を紹介しておきます。「武力によってもたらされる虐待や破壊の苦しみから人々を守り、勇気をもって対話への道を選択し、実現していくことができますように。平和の元后マリアが、世界を戦争の狂気から守ってくださいますように。」
 さて、皆さんは、成年年齢を18歳に引き下げるという民法が4月1日に施行されることに伴い、新制度最初の成年となります。
 これからは、父母の親権にも服さなくなり、自分の住む場所、携帯電話の購入、クレジットカードの作成、アパートの借用、十年有効パスポートの取得等を自分の意思で決めることができるようになります。その一方、未成年取消権がなくなります。後になって契約を取り消すことができなくなる可能性もありますので十分に注意してください。
 これからは、成年としての責任を伴う行動が強く求められますが、トラブルに巻き込まれることが増えると予測されています。万一、トラブルに巻き込まれたら、一人で抱え込まず、早急に家族や188(消費者ホットライン)に相談することが肝要です。
 新型感染症、夏季・冬季オリンピック・パラリンピック、ウクライナ侵攻、新民法施行等大きな出来事が満載で、記憶に刻み込まれる卒業年です。
 現在、わが国は、新型コロナウイルス対策とともに、Society5.0(超スマート社会)の実現へ向けて、様々な施策が推進されています。新たな生活様式とともに、AI等の先端技術が高度化し、社会の在り方や私たちの日常生活が劇的に変化しつつあります。これからは、予測困難な時代だと言われています。
 こうした時代では、あらゆる他者を尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓く力が大切です。カトリック信者で作家の遠藤周作さんは「人生とは、志を持ち高みをめざして生きること」と述べられています。
 皆さんは、それぞれの専門分野で、志を持ち、さらに高度な知識とともに、多様な人々と協働する力を付け、将来の日本を支えてくれることでしょう。
 これからも、平和を誠実に希求し続けるとともに、かけがえのない命と暁の星で育んだ友情を大切にして下さい。そして、これまで惜しみない愛情を注いでくれた家族に、多くの借りをつくっている家族に感謝し、必ず新成年として恩返ししてください。人生100年といわれる時代を、本校で育んだ恕・感謝の心を遺憾なく発揮し、燦燦と輝き多くの人を照らしながら活躍してくれることを祈念いたします。
 予餞会で在校生が贈ってくれた「サザンカ」の歌詞の一部を最後に紹介し式辞といたします。「誰よりも転んで 誰よりも泣いて 誰よりも君は 立ち上がってきた 僕は知っているよ 誰よりも君が一番輝いている瞬間を」
 では、行ってらっしゃい。

校長 小野田文明
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