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校長先生のお話

「Let it be」はマリアさまの 「Fiat voluntas tua」なのです。
2014-05-09
 私にとって60回目の春を迎えています。去年の11月の宗教科の科会の折に、英語が良くできる一人のシスターから「神父様、マリアさまが受胎告知のときの返事がLet it beだとご存知でしたか?」と聞かれ返事に詰まりました。
 
  英語の聖書を引っ張り出し、ルカ福音書1章38節を読んでみました。
Let it be to me according to your word.(お言葉どおり、この身になりますように。)とありました。ビートルズが歌っていた歌が実はマリアさまのことを歌っていたということに半世紀ぶりにようやく気が付いたのです。
 
  今まで、私の60年の半生の中でよく口ずさんでいた歌です。中学生のころビートルズが日本に来て日本中が大騒ぎしていたことも知らず、九州の長崎で最初にビートルズと出会ったのが映画でした。すぐ上の兄が映画に行こうと誘って連れて行ってくれたのが「Help!!」でした。
 
  日本もよく知らなかった私にとって、イギリスと言う外国をビートルズという視点で眺めたのが非常に新鮮でした。そしてその時の印象が外国に行きたい、外国で生活したいという強い望みを心の片隅に生じさせた最初ではなかったかと思います。
 
  イギリスの隣国アイルランドに2か月間英語の勉強のために夏休みを使ってダブリンにあるカルメル会の修道院で過ごしたことがありました。帰りに大英博物館を見学したくてロンドンに寄りました。2週間を過ごすうちにどうしてもリバプールに行きたいと言う気持ちを抑えきれずに列車に乗っていました。それくらいビートルズの印象が深かったのかもしれません。
 
  ところが今振り返っても、どういう所へ行ったのか、何を食べたかということはすっかり抜け落ちています。ただその時写真をたくさん撮ったのでネガフィルムには今も残ってはいると思います。唯一の記憶はパブで大変おいしいモルツウイスキーを飲んだことだけは今も心に残っています。
 
  リバプールは、昔からアイルランド移民のイギリスへの上陸地点です。アイルランド人が誇りとする聖パトリックの少年時代も、このリバプールで奴隷として酷使されていたという話が残っています。その後聖パトリックは、逃げ出してアイルランドに戻っています。そして「巡礼の霊性」という生き方を生涯を通して生きた聖人だったと語りつがれています。
 
  話が大きくそれてしまいました。日本における「レット・イット・ビー」は、「気ままに生きてればどうにかなるさ」という意味として使われていたように思います。少なくとも「神のみ旨のままになりますように」という意味では理解されていなかったようにも思うのです。
 
  When I find myself in times of trouble 私が悩み苦しんでいるとき
Mother Mary comes to me                    聖母マリアが私のもとを訪れ
Speaking words of wisdom                   知恵の言葉を話してくれる
Let it be                                            「神のみ旨のままになりますように」と
 
  And in my hour of darkness わたしが闇に包まれるとき
She is standing right in front of me 聖母マリアが私のすぐ目の前に立ち
Speaking words of wisdom 知恵の言葉を話してくれる
Let it be 「神のみ旨のままになりますように」と
 
  本当にマリアさまの祈りの心が私たちにも伝わるような言葉で歌われていたことに驚きます。日本には、キリスト教的なバックグラウンドがないものですから、多くの人に口ずさまれたこの歌の真意が伝わらなかったのかもしれません。多くの出来事を前にして落ち込んだり苦しんだりしている人にとって、この歌は大きな励まし、支えとなった歌だったのです。それがマリアさまの受胎告知の時のマリアさまの返事だと言うことは、神様と私たちの関係・祈り・前向きに人生を生きる人を支える言葉、知恵のことばだったのです。
 
  5月に聖母マリアさまをお祝いすることの意味が、もっと広く豊かになったような気がします。日本人も父である神より母マリアさまを大切にする傾向があります。そのマリアさまが「fiat voluntas tua」という言葉で神の子イエスを受け入れた勇気と力が、多くの人々にも与えられるという知恵のことばであると言うことをあらためて感じたのです。
 
  私たちは、この5月をすごすにあたって、マリアさまがご出現の度に多くの人に勧められたロザリオの祈りを大切にして、自我との戦いにおいていつも「あなたのみ旨のままになりますように」という謙虚さと神様に対する深い信頼を育てて行きたいと思います。

校長 山口道晴
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