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校長先生のお話

第70回卒業式 式辞
2024-03-01
 弥生を迎え、草木の新芽が萌え出ずる頃となりました。本日は、とても爽やかな晴天に恵まれ、節目でもある七十回目の卒業証書授与式が挙行できますこと。さらに、四年ぶりに、北村保護者会長・児玉暁の星小学校長を来賓にお招きし、ご多忙の中ご臨席を賜るとともに、四・五年生を入れて従来の形でのお祝いができますことにとても大きな喜びを感じています。
 
 保護者の皆様、お嬢様方のご卒業おめでとうございます。これまで掌中の珠のごとく大切に育ててこられた本日のお嬢様の姿に、感慨一入のことと存じ上げます。そのお嬢様の多感かつ大切な青春時代を、本校の教育に委ねていただき、誠にありがとうございました。昨年度までの高校生活2年間は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、十分な教育活動をご提供できませんでした。しかしながら、この一年間は、先月15日に在校生から卒業生への餞として実施された予餞会を始め、本校の伝統的行事である記念祭バザーやハレルヤコーラス等を本来の形で体験させて卒業を迎えることが出来ました。こうした貴重な思い出とともに、本日を持って、次なるステージへ向けて巣立って参ります。これからは、成年として、自分で物事を決断し歩んでいくこととなりますが、独り立ちできるまで、もう暫く温かく見守ってやってください。

 「紡愛(Weaving Love)の会」の皆さん、卒業おめでとうございます。本日は、55名の仲間と過ごした思い出一杯の校舎に別れを告げ、新たなる扉を開き未来へと向う旅立ちの日です。この暁の星で巡り合い6年間または3年間を共に過ごした仲間との日々は、とても貴重で大切な一生涯の宝物となったことでしょう。振り返ってみると、皆さんの高校生活の2/3は、まさに、新型コロナウイルス感染症に翻弄された年月でした。やりたかったことや挑戦したかったこともできず我慢を強いられ不安な毎日でしたね。それでも、「今だからこそできること」を模索しながら実行してくれた「星河一天」をスローガンに掲げた生徒会活動や密集を避けながら皆で楽しめる新種目「ピニャータ」を考案した運動会実行委員、いずれも当たり前の日常が失われ閉塞感漂うコロナ禍の中でも輝きが放てる学校生活にしたいという強い思いがひしひしと伝わる素晴らしい活動ぶりでした。
お昼の楽しみの一つであるお弁当の時間も、無言かつ前を向いたままでクラスメートと笑いあうこともできませんでした。さらに、高校生活の思い出となるべく修学旅行が三泊四日の国内実施になるなど、密なる高校生活が送れないことも多々ありましたが、互いに愛を紡ぎあいながら、学んだことや友情を深め合った三年間でした。こうした皆さんの姿に、私たち教職員は、言い尽くせない勇気と元気を頂いていました。とても大切な心からの宝物を贈ってくれた皆さんに、深く感謝いたします。ありがとう。そして、皆さんが灯し続けた伝統の光や本校が目指す「豊かなかかわりを築いていく力」や「奉仕する心と実践する力」は、ここにいる在校生の皆さんが確実に引き継いでくれるものと確信しています。安心して飛び立ってください。
  
 現在、わが国は、Society5.0(未来社会)の実現へ向けて、様々な施策が推進されており、近年、AI等の先端技術が、さらに加速度的に発展し高度化しています。車の自動運転が実用化へ向けて実証実験の段階に入るとともに、人型ロボットが働く社会も現実味を帯びてきました。これまでの働き方や私たちの日常生活が劇的に変化しつつあることが伺えます。一方で、生成AIに係る報道も、連日のようになされるようになり、フェイク動画や音声に対して警鐘を鳴らされています。こうした状況も踏まえ、これからは、予測困難な時代となり、より一層真偽を見極める力が求められると言われています。また、人生100年時代の中枢として活躍する世代、多様な人々と協働しながら将来の日本を支える世代でもあり、学び続ける力が重要だと言われています。先行き不透明で加速度的に変化する社会の中ですが、本校で培ったやり抜く力・学び続ける力を遺憾なく発揮し、大きく羽ばたいてくれるものと信じています。

 さて、今年1月1日に襲った能登半島地震発生から今日でちょうど2か月を迎えました。死者241名・住宅被害が7万4千棟余り(内、全壊住宅8795棟)とかけがえのない尊い命が奪われるとともに甚大な被害を及ぼし、伝統文化である輪島塗の継承も危惧される等、今も復興がままならない状況です。また、「ロシアのウクライナ侵攻」から2年が経過致しました。ウクライナ政府は、この侵攻による2年間で命が奪われた人が、約3万1千人に上ったことを公表されました。未だ平和的解決の見通しはつかず、多くの尊い人命が失われ続けています。パレスチナ自治区ガザを巡る紛争は、戦闘休止や人質解放に向け、関係国の情報機関トップによる会合が近く開かれるとの報道もなされていますが、国境なき医師団の家族の命が奪われるなど深刻な状況にあります。マザー・テレサは、「私達のしていることは、大海の一滴に過ぎない。もし、その一滴がなければ大海にはなりません」と言われています。改めて、命の尊さや国際平和について、一人ひとりの小さな声を積み重ねていくことの必要性・重要性を痛感せざるを得ません。今後も、本校で育んだ「Women for others」「命・恕・感謝の心」を礎にしながら大海の一滴となる学びを継続してください。そして、人々に今日を生きる力と明日への希望の光を与えるようなアガペーである愛を紡ぎ続けてください。相田みつをさんの「この世は」という詩に「この世は わたしがわたしになるところ あなたがあなたになるところ」とあります。愛を紡ぎながら、あなたらしいあなただけの素敵な花を咲かせてくれることを祈念しています。

 また、予餞会で皆さんが歌ってくれた「キセキ」のフレーズに「君のくれた日々 過ぎ去った日々 二人歩いた『軌跡』 僕らの出逢いがもし偶然ならば? 運命ならば? 君に巡り合えた『奇跡』」とあります。奇跡的に出会い、これまでの人生の3分の1あるいは6分の1を共に歩んだ軌跡がこの校舎に刻み込まれています。この暁の星で奇跡的に出逢い育んだ真の友愛(フィリア)をいつまでも大切にしてください。これからは、新成年としての自覚と責任ある行動が求められます。これまで惜しみない愛情を注ぎ、大きな支えとなってくれた家族に、ここまで育てて頂いた家族に多くの借りをつくっていることを忘れないでください。生まれてきたこと、育ててもらったこと、出会ったこと、笑ったこと、涙したこと、このすべてに感謝するとともに、この命と家族にありがとうを伝えてください。

 最後に、紡愛(Weaving Love)の会の皆さんに、卒業アルバムにも掲載されているコロサイの信徒への手紙3章12節並びに14節を紹介し式辞といたします。「あなたがたは神に選ばれ、聖なる者とされ、愛されているのですから、憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。」「これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成するきずなです。」

 いよいよ、船出の時ですが、あなたがたの故郷はいつでもここにあります。では、「夢に向かって一歩ずつ前へ」。行ってらっしゃい。

2024年3月1日
福山暁の星女子高等学校 校長 小野田文明
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