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理事長の話

【高校卒業式】理事長告辞
2023-03-01
『第69回 福山暁の星女子高等学校卒業式 理事長告辞』

星翔の会の皆さん

 福山暁の星女子高等学校ご卒業おめでとうございます。
高校を卒業して、名実と共に大人への仲間入りとなります。一人ひとり違う道を歩む新たな旅が始まります。

 今までは、何かにつけご家族の方々の全面的な支えがあって学生生活を送ってきましたが、これからは一人の自立した大人として扱われます。自分がどのように生きたいか、何を最も大切にして生きるかについてしっかりとした考え方を身に付けていってください。
 何を大切にするか、世の中ではそれを「価値観」と呼びます。価値観は人によって違います。法律に違反したり、迷惑をかけたりしない限り、価値観に良し悪しはありません。一人一人が持つ価値観は尊重されるべきです。

 世の中で最も受け入れられている価値観は経済性に重きを置く価値観です。どちらがより経済的な価値が高いか、これを物差しにして、行動の選択肢から選び取るというものです。会社で言えば、より儲かる会社が生き残り、儲からない会社は淘汰されていく。これが私たちの生きる資本主義社会の論理になります。
 この論理に従い、私たち自身も自分たちの利害を考えます。自分にとって経済的に利となるものと害になるものを見分けて、利の方が害よりも大きくなるように行動します。つまり受け取るものと与えるものを比べたとき、より多く受け取るものを選ぶということです。この利害を把握することを学び、出来るだけ多くの利を得られるように自分の行動を選択するのです。こうした行動は決して責められることではなく、逆に精緻に利害関係を計算して取った行動は「賢いもの」として称賛されたりします。

 皆さんが学んだ福山暁の星女子高等学校はキリスト教の価値観に基づいて創立された学校ですが、キリスト教の価値観はちょっと違います。すなわち、利害関係に基づいた価値観ではなく、愛に基づいた価値観です。聖書には愛について書かれた有名な個所があります。

 愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。
 愛は自慢せず、高ぶらない。
 礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。
 不義を喜ばず、真実を喜ぶ。
 全てを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。
     (コリントの信徒への第一の手紙13章4節~7節)

 この一節は実は、教会で結婚式を挙げるとき聖書朗読としてよく読まれる個所ですが、決して結婚する夫婦の間だけではなく、キリスト教の価値観を最も表している言葉です。「利害」に基づく論理を捨てて「愛」に基づく論理に従う、これこそキリスト教が教える価値観です。受け取るものと与えるものを比べたとき、さっきとは逆で与えるものの方が大きいということです。いや、与えるばかりで受け取るものが何もない、無償の愛の姿もあるかもしれません。皆さんが学んだ福山暁の星女子高等学校はまさにこの愛に基づく論理によって生まれた学校です。そうでなければどうして75年も前に日本語もわからないフランスのシスター方が遠く福山までやってきて、学校を創ろうとしたでしょうか?

 今世界はロシアによるウクライナ侵略に揺れています。ウクライナを侵略しているロシア、国連総会の場でそのロシアに即時撤退を求めた国は141か国に上りました。日本もロシアを非難する側ですが、往々にしてこの戦争が民主主義と専制主義の戦いであり、専制主義国家の横暴を許すと台湾海峡で同じことが起きるのではとする論調があります。民主主義こそ普遍的な価値でこれを専制主義から守ることが正義であると考えている人々も多くいることでしょう。もちろん民主主義は人類が営々と築き上げてきたシステムで、私たちにとって大切なものです。
 しかしながらこういった論調はキリスト教の価値観とはちょっと異なります。ロシアは戦争により民主主義への挑戦を行なったことにより非難されるのではなく、ウクライナの人々の命を奪い、愛する家族を引き裂き、大切な故郷を破壊したことによってこそ非難されるべきです。普遍的なのは民主主義か専制主義かではありません。人間の愛こそが普遍的であると悟るべきです。

 暁の星で学ばれた皆さんは、実はこれらのことはよくわかっておられるでしょう。しかし社会に出ると、多くの価値観が入り乱れ、本当に大切なことが覆い隠されてしまうことが多くあります。

 皆さん、これからは、常に学んでください、考えてください、そして祈ってください。学ぶときには、決して書籍やネットで調べるだけではなく、そこに関わる人の語る言葉を聞いてください。考えるときには、自分にとっての利害ではなく、そこに関わる人が悲しんでいないかどうかに思いを巡らせてください。祈るときには、アンジェラスの鐘の時に心を落ち着かせたことを思い出してください。「他者のために生きる」これが私たちに与えられた使命です。

 では福山暁の星という港を出港して、これから新しい世界に向けて、一人ひとりの素晴らしい人生の旅に出発してください。
では、行ってらっしゃい! Bon Voyage!よい旅を!

2023年(令和5年)3月1日
学校法人 福山暁の星学院 理事長
田中 靖
学校法人 福山暁の星学院
〒721-8545
広島県福山市西深津町三丁目4番1号
TEL.084-922-1682(学院直通)
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