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校長先生のお話

第69回卒業式 式辞
2023-03-01
 三寒四温を繰り返す気候が続いていましたが、弥生を迎え寒さも和らぎ春めいてまいりました。本日、このように第六十九回卒業証書授与式が挙行できますこととともに、先輩や後輩と接する機会を奪われ続けた卒業生の門出に、五年生を入れてお祝いすることができますことにとても大きな喜びを感じています。
 また、私にとって、中学入学から高校卒業までの6年間の成長を見届けることができた初めての学年だけに感慨も一入です。
 保護者の皆様、お嬢様方のご卒業おめでとうございます。これまで手塩にかけて育ててこられた本日の姿に、様々な出来事やご苦労された場面が去来し、万感胸に迫る思いのことと存じ上げます。大切な多感な時期を、本校の教育に委ねていただき、誠にありがとうございました。新型コロナウイルス感染症の影響を受け続け、十分な教育活動をご提供できませんでしたが、本日を持って、次なるステージへ向けて本校を巣立って参ります。これからは、成年として、親の同意がなくても自己責任でできることが増えますが、独り立ちできるまで、もう暫く温かく見守ってやってください。
 星翔の会の皆さん、卒業おめでとうございます。本日は、55名の仲間と過ごした思い出の校舎に別れを告げ、新たなる扉を開き未来へと向う旅立ちの日です。
 皆さんの高校生活は、まさに、新型感染症に翻弄され続けた三年間でした。入学式をはじめ、多くの行事が縮小あるいは中止せざるを得ない状況の中での学校生活であり、もっとも、影響を受け続けた学年でした。
 「やりたかったことも挑戦したかったこともできず不安な毎日だった」「我慢することばかりで想像していた高校生活ではなかった」「楽しみだった行事が次々となくなり、未来を奪われていくような感覚を持て余していた」等と吐露してくれていることからも明らかでした。
 こうした中でも、「普通の高校生活ではなかった。だからこそ挑戦できたことや学んだことがたくさんあった素晴らしい三年間になった」「今だからこそできることを探して、大切に時間を過ごすようになった」「自分達らしい学びや喜びを見つけることができた三年間は、何よりも大切な時間だった」「暁の星で過ごしたこの三年間は、まぎれもなく幸せな密な青春であった」等と逆境にも負けず、高校生活の一瞬一瞬を楽しみながら、精一杯日々を過ごしてくれたことが伺える言葉は、私たち教職員にとって、言い尽くせない希望の光となり、とても大切な宝物となりました。皆さんに、感謝いたします。
 振り返ってみると、かけがえのない友と喜びや悲しみを分かち合いながら駆け抜けた高校生活、翻弄され艱難を強いられた中ではありましたが、多くの貴重な体験を積み重ねてきました。1年延期かつ二泊三日の国内実施となった修学旅行、「やっと、いろいろな人と話ができ、学校になじめた気がする」という言葉に、改めて行事の大切さを実感させられました。さらに、縮小・延期・中止を余儀なくされた運動会・文化祭・クリスマス会、そして、本年度やっと開催できた記念祭バザー、縮小しての開催でしたが、高校から入学した人たちにとっては、初めて、本校独自の伝統的行事を体感してもらうことができました。そして、延期しながら昨日執り行われた伝統の灯を先輩から受け継ぎ後輩に受け渡した光の伝達式など多岐にわたる本校独自の行事や学校生活を通して、本校が目指す「豊かなかかわりを築いていく力」や「奉仕する心と実践する力」を修得することができました。 
 また、コロナ禍でもできることを模索し、創意工夫しながら企画運営してくれた生徒会活動等、「一人ひとりの輝きで一つの花を咲かせる」との思いで活動していた姿は、とても印象的でした。
 その姿は、フィリップ信徒への手紙二「何事も、不平や理屈を言わずに行いなさい。そうすれば、…(中略)…世にあって星のように輝き、命の言葉をしっかり保つでしょう。こうして私たちは、自分が走ったことが無駄ではなく、労苦したことは無駄ではなかったと、キリストの日に誇ることができるでしょう。(2章14-16)」そして、ペトロの手紙二「夜が明け、明けの明星があなたがたの心の中に上るときまで、暗い所に輝くともし火として(1-19)」という聖書の教えに基づく学校生活でもありました。あなたがたは、逆境の中でも、一人ひとりの輝きを失うことなく、それぞれの花を咲かせてくれました。とても、素晴らしく素敵な卒業生です。
 さて、現在、わが国は、Society5.0(未来社会)の実現へ向けて、様々な施策が推進されており、近年、AI等の先端技術が、さらに加速度的に発展かつ高度化しています。人型ロボットが働く社会、車の自動運転化等も現実味を帯びてきました。また、2年後の2025年大阪・関西万博を皮切りにエアータクシー事業が開始予定であり、先月21日には、四運航事業者が選定され国内初の商用運航となる見通しとの報道もありました。空飛ぶクルマ車社会の出現です。これまで、映画や小説等では幾度も描かれていた空想の世界が、急ピッチで実現し到来しようとしています。これまでの働き方や私たちの日常生活が劇的に変化しつつあることが伺えます。こうした状況も踏まえ、これからは、予測困難な時代だと言われています。
 こうした時代では、あらゆる他者を尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓く力が求められます。
 皆さんは、それぞれの専門分野で、志を持ち、さらに高度な知識とともに、多様な人々と協働する力を付け、将来の日本を支えてくれることでしょう。
 やっと、平穏な日常生活が可能となります。人生100年といわれる時代の中枢として活躍する世代の皆さんには、学び続ける力が重要だとも言われています。先行き不透明で加速度的に変化する社会の中ですが、本校で培った学び続ける力を遺憾なく発揮し、さらに大きく羽ばたきながら密なる青春を過ごしてください。
 また、国際平和を揺るがす「ロシアのウクライナ侵攻」から1年が経過致しました。未だ平和的解決の見通しはつかず、多くの尊い人命が失われ続けています。アメリカは、先月20日、バイデン大統領の電撃的なウクライナ訪問、24日には、ロシアの侵攻1年に合わせ20億ドル(約2700億円)の追加軍事支援を表明する等長期化の様相を呈してきました。「同じ空の下に生きる人類は一つの家族なんだ」とブルース・リー氏は言っています。私たちも、戦争のない平和な世界を希求し続けていきましょう。
 皆さんは、今後、成年として、父母の親権にも服さなくなり、自分の住む場所、クレジットカードの作成等を自分の意思で決めることができるようになります。その一方、未成年取消権がなくなります。後になって契約を取り消すことができなくなる可能性もありますので十分に注意してください。これからは、成年としての責任を伴う行動が強く求められるということですが、これまで惜しみない愛情を注ぎ、大きな支えとなってくれた家族に、ここまで育てて頂いた家族に多くの借りをつくっていることを忘れないでください。必ず、新成年としての自覚を深め、恩返ししてください。
 今後も、本校で育んだ「Women for others」「命・恕・感謝の心」を礎にして学び続けるとともに暁の星で育んだ友情を大切にしながら、人々に今日を生きる力と明日への希望の光を与える人となり、あなただけの素敵な花を咲かせてくれることを祈念しています。
 昨年の予餞会であなたたちが卒業生に贈ってくれた「サザンカ」の歌詞の一部を最後に紹介し式辞といたします。「誰よりも転んで 誰よりも泣いて 誰よりも君は 立ち上がってきた 僕は知っているよ 誰よりも君が一番輝いている瞬間を」
 では、また逢う日まで、行ってらっしゃい。

2023年3月1日
福山暁の星女子高等学校 校長 小野田文明
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