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校長先生のお話

第67回卒業式 式辞
2021-03-01
 年は厳しい寒さにも見舞われましたが,早春の息吹身に染む今日,弥生の空が美しく晴れ渡り,空気も暖かくなってまいりました。本日は,第六十七回卒業証書授与式が挙行できますことに深く感謝申し上げます。
 今年も,このおめでたい式を縮小せざるを得ない状況となりましたこと,まず持ってお詫び申し上げます。
 さて,保護者の皆様,お嬢様方のご卒業おめでとうございます。これまでの日々の出来事や様々なご苦労などが去来し,本日の成長したお嬢様方の姿に感慨一入のことと存じ上げます。かけがえのない青春時代を,本校の教育に委ねていただき,誠にありがとうございました。本日を持って,本校を巣立って参りますが,社会人になるまで,もう暫く温かく見守ってやってください。
 
 明煌の会の皆さん,卒業おめでとうございます。本日は,89名の仲間と過ごした思い出深い校舎に別れを告げるとともに,新たなる扉を開き未来へ向かってはばたく旅立ちの日です。
 新しい制服に身を包み坂道を上ったあの日から三年間,かけがえのない友と喜びや悲しみを分かち合いながら全力で駆け抜けた高校生活,多くの貴重な体験を積み重ねてきました。カナダへの修学旅行・記念祭バザー・聖母月・クリスマス会・伝統の灯を先輩から受け継ぎ後輩に受け渡した光の伝達式など多岐にわたる本校独自の行事や部活動を通して,本校が目指す「18歳のすがた」である「豊かなかかわりを築いていく力」や「奉仕する心と実践する力」などを修得することができました。
 振り返ってみると,皆さんは,時代に翻弄されながらも,明るくキラキラと輝きながら学校生活を送ってくれていました。新たなる大学入試共通テスト開始初年度の学年,その対策から始まった高校生活でしたが,英語の民間試験,国語数学の記述式問題の導入が見送りとなるなど,これまでの努力が水泡に帰す状況にも幾度か見舞われました。そして,新型コロナウイルス感染症の猛威にさらされた最終学年,高校生活の思い出になるべき運動会や記念祭バザー等の中止も余儀なくされました。
 こうした試練にさらされた三年間でしたが,「艱難汝を玉にす」と言われるように,皆さんは,いつも明るく煌めきながら学校生活を送り,試練や苦難を見事に乗り越え成長してくれました。
 「神は乗り越えらない試練を与えない」とよく言われます。
 この言葉は,コリントの信徒への手紙一10-13の
 「あなたがたを襲った試練で,人間として耐えられないようなものはなかったはずです。神は真実の方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず,試練と共に,それに耐えられるよう,逃れる道をも備えていてくださいます。」に由来する言葉です。また,ローマの信徒への手紙 5-3,4では,「苦難は忍耐を,忍耐は練達を,練達は希望を生むということを。」と教えています。
 皆さんは,これからの人生の中で,幾度かの試練や苦難に遭遇することもあるでしょう。だれでも思いがけない病気や考えてもいなかった災いに襲われる可能性をもっています。聖書は,人生の試練や苦難の中で,忍耐を学び,人生に熟練し誇らしい希望を生み出すこと,すなわち,苦難は希望に至る入口であることを教えてくれています。
 現在,わが国は,少子高齢化・人口減少社会への対策とともに,Society5.0(超スマート社会)の実現へ向けて,様々な施策が推進されています。AI,ビッグデータ,IoT,ロボテックス等の先端技術が高度化し,社会の在り方や私たちの日常生活を劇的に変化させようとしています。このように,産業構造や社会システムが非連続的とも言えるほどに急激に変化しており,今は正に予測困難な時代だと言われています。
 こうした時代では,あらゆる他者を尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓く力が大切だと言われています。
 本校の卒業者数も,皆さんの代で一万人を超えました。これまで,多くの卒業生たちが様々な分野で,日本のみならず世界に羽ばたき活躍しています。
 皆さんも,それぞれの専門分野で,さらに高度な知識とともに,多様な人々と協働する力を付け,将来の日本を支えてくれることでしょう。
 まもなく東日本大震災から十年,先日も大きな地震に襲われました。3.11の余震とのことでした。南相馬修道院に行かれたSr.北村は,歩くことができず,生涯で初めて体験する揺れだったと言われていました。フラッシュバックを起こした人もあり,まだまだ大きな不安に駆られる日々が続いているようです。想定を遥かに超えた未曽有の大震災,これまで15899名の尊い人命を奪うとともに,甚大な被害を齎し,未だ深い爪痕を残しています。そして,本年度の新型コロナウィルス感染症,予期せぬ状況でかけがえのない命が奪われました。
 「命という素晴らしい賜物は,私たちが初めて授かった贈り物です」とローマ教皇は述べられています。これからも,幾多の困難に遭遇するかも知れませんが,授かった命を大切にしながら平和を希求し続ける社会の一員として過ごしてください。 
 竹内まりやさんの「いのちの歌」の中に「生まれてきたこと,育ててもらえたこと,出会ったこと,笑ったこと,そのすべてにありがとう,この命にありがとう」というフレーズがあります。
 また,安井かずみさんも「忘れていたものがある ありがとう!である 何と私はありがとうに囲まれていることだろう」と言われています。
 かけがえのない命と暁の星で育んだ友情を大切にするとともに,これまで惜しみない愛情を注いでくれた家族に,多くの借りをつくっている家族に感謝し,必ず恩返しという形で借りを返してください。そして,「笑顔がステキな 光輝く先輩 私たちのあこがれです」と後輩から慕われた皆さんです。本校で育んだ命を大切にしながら,恕・感謝の心を遺憾なく発揮してください。これからも明るくキラキラ煌めきながら,試練や苦難を乗り越えて活躍してくれることでしょう。
 予餞会で在校生が歌ってくれた「正解」の歌詞を最後に紹介し式辞といたします。「明日からは,僕だけの正解をいざ探しにゆくんだ。また逢う日まで。あなたのこれからの人生,『よ~い,はじめ』。」

校長 小野田文明
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