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校長挨拶

校長
「共感」「命・恕(思いやり)・感謝の心」

 本年度から、学校教育活動に当たって、マスク着用を求めないことが基本となることや新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類へ引き下げられることに伴い、従来の教育活動が制限なく実施できる運びとなりました。しかしながら、広島県内の感染者数は、連日300名前後報告されており、引き続き、三密回避、適切な換気、手洗い等を徹底しながら学校教育を推進してまいります。なお、海外への修学旅行を不安視する声も聴いていますので、本年度に限り、1年延期していた5年生徒と4年生の二学年で海外と国内の選択制として実施する予定です。
 また、平和を希求する世界中の人々を恐怖と不安に陥れたロシアのウクライナ侵攻は、1年を超え、長期戦の様相を呈してまいりました。
 ローマ教皇は、「世界的な紛争を生きる今日の劇的状況において、対立的でないコミュニケーションを確立することが求められている」と述べられ、「世界広報の日」(日本の教会においては、5月14日に行なわれる)のテーマを「『愛に根差した心理に従い』心を込めて話す」を選ばれました。
 本校でも「ウクライナで続いている戦争に巻き込まれ、耐え難い苦痛と不安の中で避難生活を余儀なくされている人々に必要な支援の手が差し伸べられ、平穏な日々を取り戻すことができますように。」との願いを込め、引き続き「ウクライナ人道支援募金」を行ってまいります。

 さて、本校は、戦後の混乱期に、フランスから四人のシスターたちが来福し、言語、風俗、習慣、文化も違う国で、筆舌に尽くしがたい幾多の困難や苦労を乗り越え、一面麦畑であったこの深津の地に一粒の種を落とし開校されたカトリックの学校です。
 「今の日本にとって、一番必要なのは女子教育」であるとの強い信念のもと、未来を担う女性の教育のために「Women for Others」(他者のために生きる女性の育成)を建学の精神に開校され、本年度で三四半世紀を迎えることとなりました。多くの方のお支えにより、75年の歴史を刻み、卒業者数は、1万人を超えています。
 これまで本校を巣立っていった卒業生は、政治・経済・放送、さらには、医療・法曹・官僚・教育・芸術等多岐に渡る分野の中枢として日本のみならず世界各地で活躍しています。
 ローマ教皇は、これまでも、「いのちという素晴らしいたまものは、私たちが初めて授かった贈り物です。」と述べられています。私たちは、これからも、授かった大切な命、かけがえのない命の大切さについて、脈々と流れるカトリック学校としての使命を継承しながら、教育を推進してまいります。

 現在の中高校生は、人生100年時代を生き抜き22世紀の礎を築く世代となるとともに、国が推進しているSociety5.0(未来社会)の中で活躍する世代となります。
 近年、AI等の先端技術が、さらに加速度的に発展かつ高度化しています。人型ロボットや自動配送ロボットが働く社会、車の自動運転化等も現実味を帯びてきました。また、2年後の2025年大阪・関西万博を皮切りにエアータクシー事業が開始予定であり、空飛ぶクルマ車社会の出現です。これまで、映画や小説等では幾度も描かれていた空想の世界が、実現し到来しようとしています。これまでの働き方や私たちの日常生活が劇的に変化しつつあることが伺えることから、予測困難な時代が到来すると言われています。こうした時代では、あらゆる他者を尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓く力が求められるとともに、複線化する生涯にわたって学び続ける力が重要だと言われています。
 こうした時代を生き抜くために、知識技能はもとより、「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」にも重点を置いた教育の推進が求められています。このことを反映し、私立大学入試においては、総合型選抜・学校推薦型選抜による年内入試で定員の約6割が決定する状況であり、国大協でも、この入試制度利用での合格者数を加速拡大すると表明されています。
 さらに、現在の高校2年生が大学入試に臨む2025年1月の共通テストから新たな教科「情報1」が加わります。多様な文章を提示する観点から国語90分、数学2「数学2・数学B」に「数学C」を加え、時間を70分にする等の変更も示されています。
 したがって、昨年度から実施されている高等学校新学習指導要領に基づく新たな教科等の指導の充実を図るとともに、新たな入試への対策にも万全を期してまいります。

 本校においても、こうした変化に対応する力をつけることが重要であると捉え、本年度中学校入学生徒から1年時で探究型の学びと個別最適な学びの両方を体験するBLコース(ブリッジラーニング)、2年進級時に従来の授業に加え、探究型の学びを深化させるCLコース(クリエイティブラーニング)、個別最適な学びを深化させるULコース(アップデートコース)に分かれて学ぶコース制を立ち上げることと致しました。
 このコース制に伴う情報は、適宜行ってまいりますのでご覧ください。

 また、国連は、17の持続可能な開発目標(SDGs)を掲げ、2030年までの達成をめざして、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにするための普遍的な行動を呼びかけています。最近、テレビや新聞等でもSDGsに関する報道が頻繁になされ身近なものになりつつあります。本校では、引き続き総合的な学習(探究)の時間等を活用し、SDGsに係る探究活動等を展開し、自分たちができる行動につながる学びを推進してまいります。
 こうした時代のニーズを踏まえ、教科学習のベースとなる言語教育の充実を図るとともに、タブレットを使った効果的な学習・ニュージーランドのVilla Maria Collegeの生徒等との国際交流・外国人講師とのオンライン英会話等も推進してまいります。
 このような時代の中で逞しく生き抜く力ために、生徒たちには、引き続き、次の三つの力(EGGの力)を体得できるよう指導してまいります。
 ● Empathy(共感する力)
 ● Grit(やり抜く力)
 ● Growth(学び続ける力)

 本年度の本校教育目標は、「共感」「命・恕(思いやり)・感謝の心を育む」といたしました。
 この三年間は、コロナ禍の中で通常の日常生活が儘ならない中での学校生活でした。だからこそ、「而今(今という時間を大切に生きる)」「自律(自分で考え、自分で行動する)」を目標にして取り組んでまいりました。
 本年度は、新型コロナウイルス感染症に係る行動制限が緩和され、クラスメイト等と協働しながら教育活動を展開する機会が大幅に増えていきます。このことから、EGGの力の一つであるEmpathy(共感する力)の向上を図る必要があると捉えています。
 この力と共に、命を大切にしながら、他者に対する「思いやり」と「感謝」の気持ちで溢れている生徒たちを育んでまいります。このことで、いじめなど皆無で、皆が元気に明るく笑顔で学校生活を送り、持っている力や可能性を十分に引き出せる暁の星になると確信しています。 
 「共感」を「苦しんでいる人がいたら、その人の立場に自分の身を置いて、痛みや苦しみ・気持ちを理解し共有できる(分かち合える)能力」と捉え、その向上を図るとともに、「命・恕・感謝の心」を育み、他者に寄り添える「あたたかさ」と「やさしさ」で溢れている学校となるよう指導してまいります。本年度もよろしくお願いいたします。   

2023年4月1日
福山暁の星女子中学・高等学校
校長 小野田 文明


 「共感」「命」「恕」「感謝」に係る福者や聖書の教えは、次の通りです。

【共感(Empathy)】
 喜ぶ人とともに喜び、泣く人と共に泣きなさい。(ローマ信徒への手紙12-15)
 
 ある人がエルサレムからエリコへ下って行く途中、追いはぎに襲われた。追いはぎはその人の服をはぎ取り、殴りつけ、半殺しにしたまま立ち去った。ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。同じように、レビ人もその場所にやって来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い、近寄って傷に油とぶどう酒を注ぎ、包帯をして、自分のろばに乗せ、宿屋に連れて行って介抱した。そして、翌日になると、デナリオン銀貨二枚取り出し、宿屋の主人に渡して言った。「この人を介抱してください。費用がもっとかかったら、帰りがけに払います。」(ルカによる福音書「善いサマリア人」10章30-35節)

【命】
 命を愛し、幸せな日々を過ごしたい人は、舌を制して、悪を言わず、唇を閉じて、偽りを語らず、悪から遠ざかり、善を行い、平和を願って、これを追い求めよ。主の目は正しい者に注がれ、主の耳は彼らの祈りに傾けられる。主の顔は、悪事を働く者に対して向けられる。(ペトロの手紙第一 3章10-12)

【恕】
 あなたがたは神に選ばれ、聖なる者とされ、愛されているのですから、憐れみの心、慈愛、謙遜、柔和、寛容を身に着けなさい。互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたも同じようにしなさい。これらすべてに加えて、愛を身に着けなさい。愛は、すべてを完成させるきずなです。(コロサイの信徒への手紙3章12~14)

 人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい。(ルカ6章31)

【感謝】
 いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。これこそ、キリスト・イエスにおいて、神があなたがたに望んでおられることです。            (テサロニケの信徒への手紙一 5章16~18)
 なお、本校の受付右手の掲示板に、「のせる」(河野進)という詩が書で認められていますので紹介いたします。
 
 不満の手に
 どのように大きい恵みがのせられても
 小さく 小さく見えましょう
 感謝の手に
 どのように小さい恵みがのせられても
 大きく 大きく見えましょう
  目ではなく心が見るのです
 

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