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校長先生のお話

第66回卒業式 式辞
2020-02-29
 本日は少し肌寒い日となりましたが,今年は例年より早く麗らかな春の日差しが感じられ,春陽麗和の好季節を迎えようとしています。本日は,第六十六回卒業証書授与式が挙行できますことに深く感謝申し上げます。
 また,今回のおめでたい式を縮小せざるを得ない状況となりましたこと,まず持ってお詫び申し上げます。
 さて,保護者の皆様,お嬢様方のご卒業おめでとうございます。今日までの日々の出来事や様々なご苦労等が去来し,お嬢様方の姿に感慨一入のことと存じ上げます。
 麗和の会の皆さん,卒業おめでとうございます。今日は,80人の仲間と過ごした思い出一杯の校舎に別れを告げ,新たなる扉を開き,未来へ向かってはばたく旅立ちの日です。
 新しい制服に身を包み坂道を上ったあの日から三年間,かけがえのない友とともに全力で駆け抜けた高校生活,多くの貴重な体験を積み重ねてきました。振り返ってみると,カナダへの修学旅行・運動会などの学校行事,さらには,記念祭バザーや聖母月・クリスマス会・光の伝達式など多岐にわたる本校独自の行事を通して,「豊かなかかわりを築いていく力」や「奉仕する心と実践する力」等,本校が目指す「18歳のすがた」を修得することができました。
 私は,皆さんとともに本校の門を潜り,三年間の成長ぶりを目の当たりにしてきました。今年の学年目標「八面玲瓏」。まさに,心が清らかに澄みきり,円満にコミュニケーションが取れる皆さんの姿がとても印象的でした。
 こうした姿から,卒業名を麗和の会と命名しました。「麗」という文字には,「姿などが美しいだけでなく,人に対する思いやりの気持ちがあって明るく朗らかで心にわだかまりがない」という意味合いが含まれています。そして,「和」という文字には「これからも平和で和やかな生活を願い求める人であってほしい」との思いを込めたものです。マタイによる福音でも,「心の清い人々は,幸いである。平和を実現する人々は,幸いである」と告げています。
 皆さんは,この三年間「赦し」「恕」について考え,その心を育んできました。コロサイの信徒への手紙三章十二~十四の「あなたがたは神に選ばれ,聖なる者とされ,愛されているのですから,憐れみの心,慈愛,謙遜,柔和,寛容を身に着けなさい。互いに忍び合い,責めるべきことがあっても,赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように,あなたがたも同じようにしなさい。これらすべてに加えて,愛を身に着けなさい。愛は,すべてを完成させるきずなです。」という教えに基づき,「赦しと愛」について学び,「他者への思いやり」を三年間のテーマとして学校生活を歩んできました。
 さらに,この一年は,「命」について深く考えさせられた年でもありました。とりわけ,「すべての命をまもるために」をテーマとしたローマ教皇38年ぶりの来日は,私たちに大きな勇気と希望とともに,「真の平和とは非武装の平和以外にあり得ません。」などのメッセージで改めて命と平和の大切さについて深く考える機会をお与えくださいました。
 一方で,カリタス小学校児童への殺傷事件,東日本で猛威を振るった台風そして,現在は,世界各地が新型コロナウィルス感染症の脅威にさらされ,学校教育への影響も多大で異例の措置が取られるとともに,尊い命も奪われています。
 「命という素晴らしい賜物は,私たちが初めて授かった贈り物です」とローマ教皇は述べられています。これからも,幾多の困難に遭遇するかも知れませんが,授かった命を大切にしながら平和を希求し続ける社会の一員として過ごしてください。
 現在,世界は第四次産業革命の真只中であり,AIやIoT,ロボテックスに関わる話題が連日のように報じられ,経済社会や私たちの日常生活の有り様を一変させようとしています。国においても,Society5.0,すなわち超スマート社会の実現へ向けて,様々な施策が打ち出されています。また,わが国は,世界でも稀有の少子高齢化社会を迎えつつあります。こうした情勢から,皆さんを待ち受ける社会は,予測不能の時代とも言われています。
 こうした情勢を踏まえ,これからの時代は,命・平和とともに,恕の心,すなわち,人としての思いやりは,一層重要となります。皆さんは,フランスから四人のシスターたちが訪れ,ことば・文化・習慣等全く違う社会の中で,筆舌に尽くし難い幾多の困難を乗り越え「他者のために生きる女性の育成」をめざして開校した学校の卒業生です。マザーテレサは「たった今卒業された,ここにおられるすべての若い人たちが,卒業証書を誇りとして生きていくのではなく,どうか,愛する心と平安と喜びを人々にもたらしますように。(中略)神からいただいたたまものを,人々に与えることができますように。たまものは,取っておくためではなく,分かち合うためにいただいているのですから」と述べておられます。この言葉の教えや本校で育んだ心を十分に発揮しながら,心身ともに麗しく和やかで,将来のわが国を支える中枢として活躍してくれるものと期待しています。
 最後となりますが,竹内まりやさんの「いのちの歌」の中に「生まれてきたこと,育ててもらえたこと,出会ったこと,笑ったこと,そのすべてにありがとう,この命にありがとう」というフレーズがあります。かけがえのない命を大切にしながら,楽しいことや嬉しいことを分かち合った友との友情を更に育むとともに,これまで惜しみない愛情を注いでくれた家族に,多くの借りをつくっている家族に感謝し,必ず恩返しという形で借りを返してください。
 令和の時代,最初の卒業生である皆さんです。令和の文字に込められたように,「一人ひとりが明日の希望とともに,それぞれの花を大きく咲かせることができますように」。
 
校長 小野田 文明
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