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校長先生のお話

四旬節について
2014-03-05
 今年もまた灰の水曜日がやってきました。灰の意味は「悔い改め」です。この一年間を振り返り弱いものである私たちが生き方を改めてキリストの方向に心を向けなおす大切な46日間なのです。
 
  クリスマスは、12月25日と固定していますが、「四旬節」「復活祭」は、その年によって変更します。キリスト教的な立場からするとクリスマスがお祝いされるようになったのは、ずいぶん後になってからです。ですが、もともとキリスト教がキリスト教として伝えるものは、パウロも言っているように「復活したキリストを述べ伝えるためなのです」とあるようにキリスト教の信仰の中心は「復活したキリスト」から始まるのです。
 
  だから、復活祭が決まった日にちでお祝いされないためにあまり重要なことだとは思われていないようです。しかし、これはとっても大切なことなのです。
 
  これを定めるにあたって多くの古代からの論争がありましたが、基本的には第一ニケヤ公会議において「3月21日の春分の日、当日あるいはそれ以降の最初の暦の上での満月(新月から数えて14日目)後の最初の日曜日」が復活祭にあたると言われています。またこの日をもって種まきや農作業を始める基準にしたと言う話もありますので、重要な日の決定であったと思います。
 
  四旬節の四旬とは、40日を指し示しています。日曜日(日曜日は主の復活を記念する大切な日ですから40日からは外します)を計算しない日にちですので正確には46日あることになります。そして46日前が今年は3月5日であり灰の水曜日から数えて復活祭の前日までの期間を表す言葉となっています。
 
  この四旬節は、復活祭を準備するものであると言われていますが、聖週間(紀元29年頃にローマ帝国のユダヤ属州で起こったイエスのエルサレム入城から受難と死までを記念する一週間)を準備するものであることがより正確なことであるように思います。
 
  40という数字は旧約聖書の中では、特別な準備期間を指す言葉です。例えばモーセは民を率いて40年間荒れ野を彷徨ってますし、ヨナは二ネヴェの街の人たちに40日以内に改心しなければ街が滅ぶと預言しています。イエスさまは、公生活に入る前に40日間荒れ野で過ごし、断食しています。このように40と言う数字でもわかる通りに、キリストの苦しみと死と復活を準備するにふさわしい準備の数なのです。
 
  歴史的にみても様々な40日がこの期間に準備されています。初代教会では復活祭の前に40時間の断食を義務づけていました。さらに復活徹夜祭には成人の洗礼式を行うのが初代教会以来の伝統・慣習でした。初代教会においては初聖体に備えて40時間の断食を行なっていたと言う記録が残っています。
 
  カトリック教会においても、聖体拝領の前には前日の土曜日の夕食後からは水も取らないという習慣がありました。外国人宣教師たちの初代キリスト教会の初聖体に向けての準備と言うことを伝えたかったのかもしれません。それが3時間前、現在は1時間前に食べたり飲んだりすることを止めるようにという教会の教えがあります。
 
  しかし、その時間を守るか守らないかが大切なことではなく、大切なのは心なのです。ご聖体拝領が私たち信者にとっていかに大切で、私たちの信者としての心を育てる信仰の中心に来るものであることを理解するための教えであったようにも思います。ご聖体拝領の前に断食をして、緊張感をもってご聖体拝領を行う意味は一つです。ご聖体拝領を通して次のご聖体拝領まで王職(人々に奉仕すること、仕えること)、祭司職(ミサに与り聖なるいけにえの祭儀に司祭と共に与ること。聖体の秘跡に与ること)、預言職(御言葉を言葉と行いを持ってキリストを知らない人に伝えること)に与りキリスト者としての務めを社会の中で果たすことにあるのです。ただミサに与りご聖体拝領をしたから信者としての務めを果たしたという思いの人にとっては、3時間前、1時間前という形を守ることだけが大切であると考えるのかもしれません。
 
  長崎で古い信者さんにお話を聞くと、そういうご聖体拝領の前の断食について具体的な話は聞くことが出来ますが、その意味については良く説明できる方は少ないようです。一番聞くことが出来るのは「信者は大切なイエスさまが来て下さるのだから身も心も浄めなければならない」という意見です。決して間違いではないのですが、やはり10分の1の説明でしかないようです。
 
  上で初代教会は、受洗者たちに初聖体に備えて40時間の断食を命じていたと書きましたが、後にこの40時間(聖金曜日から復活徹夜祭まで)が6日間に延ばされ(理由は分かりません)最後には6週間の洗礼準備期間として行われるようになったのです。ですからこの四旬節は洗礼を受ける求道者のため設けられた期間であると言うこともできるようです。4世紀になってキリスト教が公認された時には洗礼志願者の数が激増して一人ひとりの十分な準備が行き届かなかったために全信徒にも復活前の節制の期間を求めるようになったと言うのが四旬節の起源です。
 
  大斎・小斎について
 
  四旬節では、伝統的に食事の節制が行われ、償いの業が勧めらえていました。祈り・断食・慈善の3点が奨励されたと言う教会の歴史があります。現在のカトリック教会は、神に対する祈り、自分自身に対しての節制、他人に対する慈善が大切だと教えています。そして大斎と小斎が勧められています。大斎とは灰の水曜日とキリストの受難の聖金曜日に、断食をすることです。18歳から60歳までの健康な信徒は、大斎を守らなければならないのです。灰の水曜日と聖金曜日には一日一度十分な食事をとり後の1回は軽く、もう一度は断食するのです。小斎は毎週金曜日と灰の水曜日には肉を食べないことであると教会法には書かれていますが、肉を食べる国にとってはそれも大きな犠牲になるでしょうが、肉を食べない国にとっては、その国でいつも食べているものを食べないことが犠牲になる小斎の守り方もあるように思います。また各自の判断で償いの他の形式特に愛徳の業・信心行節制を行うことによって替えることもできます。また小斎は14歳以上の信徒が守らなければなりません。
 
  カトリック(普遍的)教会の基礎知識として読んでくださればと思い書いてみました。

校長 山口道晴
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