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校長先生のお話

別学のすゝめ No1
2012-01-24
 福山市内で唯一の女子の六年一貫校と言えば、我が暁の星のことです。かつて他の学校長との集まりの中で「女子だけを集めるのは大変なことでしょう」と言われたことがあります。他の学校の募集状況をだけを聞くと、共学校としてかなりの人数を集めていたようです。
 しかし、良く考えてみると「その学校の良さ」や「メリット」として感じるものがあるからその学校を選ぶわけです。最初の選択肢の一つに本当は「別学」か「共学」かという選択肢がなければならないのに、考える親の世代がほとんど共学出身者であることで、選択の基準がいつも「共学」から始まっているような気がしています。
歴史を振り返ると明治以後第2次世界大戦までは、「小学校は共学、中等教育は別学」がスタンダードだったそうです。共学の小学校を出ると、男子は旧制中学、旧制高校で学び、女子は高等小学校や高等女学校、女子高等師範学校で学んでいました。
敗戦後、GHQから共学化が命じられて、多くの旧制中学や旧制高校は、近隣の女子校と合併するなどの形で共学化しましたが、一部の学校は従わなかったのです。その多くは私立であったと聞いています。
   二十一世紀になると、少子化の波が中学受験にも押し寄せます。生徒が集まらなければ私学は存続できません。男子校や女子校が共学化すれば単純に倍の人数を対象に生徒集めが可能になります。さらに男女共同参画への社会的意識の高まりも相まって私立でも共学化に踏み切る男子校や女子校が増えてきたのです。いまや中学受験業界では「共学ブーム」という言葉も生まれています。(注1)
   しかし、存続のためにだけ今ある形を壊すことが「自然」かと言えば、そうでもないようです。今まで培ってきた、建学の精神や女子校としての役割があったのではないかと思います。そういう意味で、「別学」についてもう一度考える大切な機会ではないのかと思います。それでブログでは3回にわけて「別学」について考えてみたいのです。
   ここに一冊の本があります。「なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか」という本です。著者は「中井俊己」という別学の小学校で教えておられた先生です。本の帯には、もっと衝撃的な言葉がありました。「男女別に教えれば驚くほど成績が上がる!東大合格トップ校の九割が女子校/男子校」という言葉です。
   もちろんストレートには「ああそうか」とはならないと思います。教える先生方の努力と、まず生徒たちからの強い志が必要になってくるからです。つまり、努力をするのは先生と生徒たち両方にもとめられているからです。ただ、男子や女子の特性を知り、最近特に注目を浴びている脳科学的な分析を見てみますと、違いを教育に生かすことができるかもしれないと考えるからです。
   ☆脳科学では男と女に大きな違いがあると主張している。(注2)
   かつては男女の態度、好み、行動の違いは社会がつくり出すという考え方が主流でしたが、二十一世紀になって脳科学が発達して、男女の違いは必ずしもそれだけではなく、脳の神経経路の働きやホルモンにもよるということがわかってきたのです。男女の脳とその働きに違いがあるということは、いまや世界の脳科学者の一致した意見です。(注3)
   つまり、胎児の成長の時から、男女の脳は違ってきており、それに応じて、生まれてからの脳の働き、見え方、聞こえ方、コミュニケーションの取り方、興味関心、得意分野などにも違いがでてきます。だからと言って脳の性差があるから平等ではないとか、同権ではないというということではないのです。個人に違いがあるように、現実に男女の脳に違いがあるということだけなのです。
   私たちは、個々の子どもの違いを受け入れて、その子どもの個性に応じて育てれば、その子どもの良さを一層伸ばせるように、男女の違いを受け入れて、その子どもの特性に応じて教育すれば、男女両方の良さを一層伸ばせます。(注4)では、どういう違いがあるのでしょうか。
   ① 女子は言語能力が高く、記憶力、流暢さ、発音のスピードといった点で優れている。
   ② 女子は聴覚が優れている。(幼児期の成長に大きな違いが見られる)
   ③ 女子の網膜はおもに色と質感を感知する小細胞が多く存在していることが生物学的 に証明されている。ちなみに男子は、動きを感知する大細胞がおもに分布している。
   ④ 女子の記憶力の特徴は音韻メモリーであり、男子は視空間メモリーである。これが 授業の時にどう違いが出てくるかと言えば、板書の時に男子にはできるだけ図に表現 すると記憶に残る。女子には板書した後話し言葉で説明するとよく覚えているという 違いになる。
   ⑤ また感情処理の仕方も男女差がある。女子は自分の感情を言葉で表現しやすく、男子は自分の感情を言葉で表現するのが苦手である。(注5)
 
   以上のように「脳科学」の研究から男女の違いが徐々に明らかにされつつあります。そのように考えると同じ人間という範疇だけでなく、性差というものが大きな違いをもたらしていたことにも気が付くのです。
 

   注1 「男子校という選択」 おおたとしまさ 著 日経プレミアシリーズ P22~23 参照
   注2~注5 「なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか」 中井俊己著 P20~40 参照 学研新書 082

校長 山口道晴
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