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校長先生のお話

パウロの生き方について
2011-07-22
 自分の司祭職の原点にいつもパウロがいる。生涯、パウロは私にとっての憧れの人である。これから何回かにわたって、パウロについて私なりの見方で話してみたいと思っている。
キリスト教が世界中に広まって行くプロセスの中でパウロの存在はあまりにも偉大である。初代教会の中で異質な存在として生涯を送った人である。ではパウロとはどのような人であったのだろうか。
   パウロは、紀元前後~67年の生涯をキリスト教の宣教のために小アジア、ギリシャ、ローマを巡り、最後は、ローマで斬首の刑を受けている。キリスト教史上、最初の偉大な学者、著述家、並びに伝道者であるばかりでなく、キリスト教よりも古い歴史を持つユダヤ教の中でも、その律法や伝統の批判者として独特の地位を占めている。パウロは世界の思想史上でも最高の思想家の一人として評価されてきた。彼の思想が評価されるとき、キリスト教そのものが大きく広がったことを歴史は示している。
   彼の思想の根本は「イエス・キリスト」である。そのキリストの紹介者としての役割に徹して生きてきたのである。パウロは、元来ユダヤ教のファリサイ派に属していたが、回心してキリストの福音をパレスチナという狭い地域から地中海沿岸の広い世界に伝え、異邦人を含む全人類の救いへの道を明らかにしたのである。
   パウロの生涯を簡単に述べたが、彼は生涯の中で、新約聖書の中の多くの書簡を残しキリスト教の本質について述べている。キリスト教について知ろうと考えるならばパウロの書簡を読まずに考えることはできない。
   校長になっても宗教の時間を持たせてもらい、授業をさせてもらっている。今年も去年と同じようにキリスト教の本質について聖書を使って語っている。語りながらいつも考えていることが一つだけある。それは、パウロがあれほどの情熱を傾けて伝えたかったキリストを私も同じ熱意をもって生徒に語りたいということである。
   パウロは、キリキアのタルソスに生まれ、二十歳の時エルサレムの神殿付属学校に留学し有名な律法学士ガマリエルから、旧約聖書やモーセの律法を学び、律法の狂信家となった。神殿での礼拝と律法の順守が彼にとって最も大切なものであった。それ故にイエスの新しい教えは、神を冒瀆し、民を惑わすものであると感じたのである。
   だから彼は、持てる力とユダヤ教の指導者の力を借りてキリスト教を迫害し始めるのである。キリスト教徒の最初の殉教者となったステファノの殉教の場に立ち会って迫害者の上着を預かっていたのも若き日のパウロであった。
   パウロが回心してキリストを伝える役割を果たすことになるとは、誰も考えられないことでもある。そのようなことがまったく考えられないような厳しさとユダヤ教に対する情熱がパウロにはみられるからである。(続く)
 
校長 山口道晴
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