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2024-03-01T18:10:19+09:00
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2024-03-01T00:00:00+09:00
【高校卒業式】理事長告辞
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=5759#block4151-5759
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<div style="text-align: left;">『第70回 福山暁の星女子高等学校卒業式 理事長告辞』<br><br> 親愛なる紡愛の会の皆さん、保護者の皆様、教職員の皆様、ここに集うすべての人々に、心からの感謝と祝福を申し上げます。本日、私たちはただ卒業という節目を迎えるのではなく、新たな旅立ちの始まりを祝福しています。<br><br> 卒業する皆さんの前に立っている私も、ちょうど今から半世紀前、50年前の1974年、皆さんの側に立ってカトリックの男子校を卒業しました。50年前というと日本がどういう時代だったか皆さんには想像がつかないと思います。今では普通に街のいたる所にあるコンビニの1号店が出来たの年が1974年でした。以来50年、時代は当時では想像も出来ないほど大きく変わりました。同じように、これらかの50年は今の時点で将来予測されることのほとんどが忘れ去られ、誰もが考えもしなかったことが注目されるようになるに違いありません。<br><br> 50年前に高校を卒業した私から、門出に立つ皆さんへひとつの言葉を贈りたいと思います。 それは、英語の動詞unlearn(アンラーン)という言葉です。学ぶという意味の動詞learnに、unという接頭語が付いています。このunには単純な否定ではなく反復・繰り返しの意味がこめられており、哲学者の鶴見俊輔さんはこれを「まなびほぐす」と訳しておられます。鶴見さんがこの単語を初めて耳にしたときの興味深いエピソードを彼の著作から紹介しておきましょう。<br><br> ――日本の学校に馴染めず、16歳でアメリカヘ留学させられた1939年の出来事です。17歳の夏休み、ニューヨークの日本図書館で働いているときに、ヘレン・ケラーが手話の通訳とともにその図書館を訪ねてきた。館長が、宮城道雄の『春の海』のレコードをかけると、ヘレン・ケラーは、蓄音機に手をふれて、そのふるえから何かを感じて、音楽についての感想を話し、偶然、私に質問して、私がハーバード大学の学生だとこたえると、自分はそのとなりのラドクリフ女子大に行った、そこでたくさんのことを「まなんだ」が、それからあとたくさん「まなびほぐさ」なければならなかった、と言った。たくさんのことをまなび(learn)、たくさんのことをまなびほぐす(unlearn)。それは型どおりのスウェーターをまず編み、次に、もう一度もとの毛糸にもどしてから、自分の体型の必要にあわせて編みなおすという状景をよびさました。――<br>セーターを編みかえると言ってもピンとこない方に別の言い方をすると、高校で学んだたくさんのことが詰まった引き出しから中身を全部出して空にして、それから自分の使いやすい並べ方で整理し直すと言ってもいいでしょう。<br><br> I’ve learned many things but later I had to unlearn. というヘレン・ケラーさんの発言にあったunlearnに関して、鶴見さんは「忘れる」という意味ではないと思う。まなびほぐさなければ、人生を生きる知恵にならないということだね」とか「学校でまなぶ知識はむろん必要だ。しかし覚えただけでは役に立たない。それをまなびほぐしたものが血となり肉となる」といった分かりやすい説明を加えておられます。<br> 50年前の卒業生として、私は人生を通じて多くの教訓を学びましたが、その中で最も重要だったのは、時には古い考えや習慣を手放し、新しい考え方や取り組み方に心を開く勇気です。世界は絶えず変化しており、私たちもまた、その変化に適応するためには、柔軟な思考が必要です。まなびほぐすことによって、私たちは大きく伸びていくのだと思います。<br><br> 私は大学卒業後、研究者として長く仕事をしましたが、その間社会の変遷に応じて必要となる技術の分野やレベルが変わり、技術の対象がどんどん変わっていきました。これらの変化に対応するためには、過去に学んだことを再考し、常に軌道修正をし、自分だけの思考過程をもう一度作り上げていく必要がありました。自分が今までに学んで正しいと思ってきたことに、どこか間違っているところがないか再検討する、あるいは疑って考える姿勢が必要でした。つまり、今までの学問体系の理解をunlearnして、そこでの私の思考パターンのクセを直すことが研究の出発点でした。今振り返るとそのプロセスは私にとって価値があり楽しいものでした。この習慣は今でも大切にしていて、「何か違うアプローチはないだろうか」とか「常識にとらわれていないだろうか」と自問自答する日々を送っています。<br><br> 皆さんは福山暁の星女子高等学校を巣立ち、新しい世界に飛び込みます。そこでは今まで学んできた多くのことが活かせないという経験をすることが多いと思います。皆さんもlearnしてきたことに固執せず、自分の思考のクセやルーチーンを常に見つめ直して欲しいと思います。<br><br> 最後に、皆さんのこれからの人生に幸福と成功が満ち溢れることを心から願っています。今日の卒業は、皆さんの人生における新たな始まりです。この新しい章が、皆さんにとって最も輝かしいものとなりますように。</div><div style="text-align: left;"><br></div><div style="text-align: right;">2024年(令和6年)3月1日</div><div style="text-align: right;">学校法人 福山暁の星学院 理事長</div><div style="text-align: right;">田中 靖<br><br></div>
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2023-03-01T00:00:00+09:00
【高校卒業式】理事長告辞
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=4366#block4151-4366
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<div style="text-align: left;">『第69回 福山暁の星女子高等学校卒業式 理事長告辞』<br><br>星翔の会の皆さん<br><br> 福山暁の星女子高等学校ご卒業おめでとうございます。<br>高校を卒業して、名実と共に大人への仲間入りとなります。一人ひとり違う道を歩む新たな旅が始まります。<br><br> 今までは、何かにつけご家族の方々の全面的な支えがあって学生生活を送ってきましたが、これからは一人の自立した大人として扱われます。自分がどのように生きたいか、何を最も大切にして生きるかについてしっかりとした考え方を身に付けていってください。<br> 何を大切にするか、世の中ではそれを「価値観」と呼びます。価値観は人によって違います。法律に違反したり、迷惑をかけたりしない限り、価値観に良し悪しはありません。一人一人が持つ価値観は尊重されるべきです。<br><br> 世の中で最も受け入れられている価値観は経済性に重きを置く価値観です。どちらがより経済的な価値が高いか、これを物差しにして、行動の選択肢から選び取るというものです。会社で言えば、より儲かる会社が生き残り、儲からない会社は淘汰されていく。これが私たちの生きる資本主義社会の論理になります。<br> この論理に従い、私たち自身も自分たちの利害を考えます。自分にとって経済的に利となるものと害になるものを見分けて、利の方が害よりも大きくなるように行動します。つまり受け取るものと与えるものを比べたとき、より多く受け取るものを選ぶということです。この利害を把握することを学び、出来るだけ多くの利を得られるように自分の行動を選択するのです。こうした行動は決して責められることではなく、逆に精緻に利害関係を計算して取った行動は「賢いもの」として称賛されたりします。<br><br> 皆さんが学んだ福山暁の星女子高等学校はキリスト教の価値観に基づいて創立された学校ですが、キリスト教の価値観はちょっと違います。すなわち、利害関係に基づいた価値観ではなく、愛に基づいた価値観です。聖書には愛について書かれた有名な個所があります。<br><br> 愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。<br> 愛は自慢せず、高ぶらない。<br> 礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。<br> 不義を喜ばず、真実を喜ぶ。<br> 全てを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。<br> (コリントの信徒への第一の手紙13章4節~7節)<br><br> この一節は実は、教会で結婚式を挙げるとき聖書朗読としてよく読まれる個所ですが、決して結婚する夫婦の間だけではなく、キリスト教の価値観を最も表している言葉です。「利害」に基づく論理を捨てて「愛」に基づく論理に従う、これこそキリスト教が教える価値観です。受け取るものと与えるものを比べたとき、さっきとは逆で与えるものの方が大きいということです。いや、与えるばかりで受け取るものが何もない、無償の愛の姿もあるかもしれません。皆さんが学んだ福山暁の星女子高等学校はまさにこの愛に基づく論理によって生まれた学校です。そうでなければどうして75年も前に日本語もわからないフランスのシスター方が遠く福山までやってきて、学校を創ろうとしたでしょうか?<br><br> 今世界はロシアによるウクライナ侵略に揺れています。ウクライナを侵略しているロシア、国連総会の場でそのロシアに即時撤退を求めた国は141か国に上りました。日本もロシアを非難する側ですが、往々にしてこの戦争が民主主義と専制主義の戦いであり、専制主義国家の横暴を許すと台湾海峡で同じことが起きるのではとする論調があります。民主主義こそ普遍的な価値でこれを専制主義から守ることが正義であると考えている人々も多くいることでしょう。もちろん民主主義は人類が営々と築き上げてきたシステムで、私たちにとって大切なものです。<br> しかしながらこういった論調はキリスト教の価値観とはちょっと異なります。ロシアは戦争により民主主義への挑戦を行なったことにより非難されるのではなく、ウクライナの人々の命を奪い、愛する家族を引き裂き、大切な故郷を破壊したことによってこそ非難されるべきです。普遍的なのは民主主義か専制主義かではありません。人間の愛こそが普遍的であると悟るべきです。<br><br> 暁の星で学ばれた皆さんは、実はこれらのことはよくわかっておられるでしょう。しかし社会に出ると、多くの価値観が入り乱れ、本当に大切なことが覆い隠されてしまうことが多くあります。<br><br> 皆さん、これからは、常に学んでください、考えてください、そして祈ってください。学ぶときには、決して書籍やネットで調べるだけではなく、そこに関わる人の語る言葉を聞いてください。考えるときには、自分にとっての利害ではなく、そこに関わる人が悲しんでいないかどうかに思いを巡らせてください。祈るときには、アンジェラスの鐘の時に心を落ち着かせたことを思い出してください。「他者のために生きる」これが私たちに与えられた使命です。<br><br> では福山暁の星という港を出港して、これから新しい世界に向けて、一人ひとりの素晴らしい人生の旅に出発してください。<br>では、行ってらっしゃい! Bon Voyage!よい旅を!</div><div style="text-align: right;"><br>2023年(令和5年)3月1日<br>学校法人 福山暁の星学院 理事長<br>田中 靖</div>
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2022-03-01T00:00:00+09:00
【高校卒業式】理事長告辞
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=3884#block4151-3884
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<div>2022年3月1日(火)</div><div>福山暁の星女子高等学校 第68回 卒業証書授与式</div>
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2021-03-01T00:00:00+09:00
【高校卒業式】理事長告辞
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=3886#block4151-3886
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<div>2021年3月1日(月)</div><div>福山暁の星女子高等学校 第67回 卒業証書授与式</div>
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2020-10-19T00:00:00+09:00
【中高】放送朝礼
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=3002#block4151-3002
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<div> 皆さん、おはようございます。福山暁の星学院理事長の田中靖です。<br />
今日の朝礼は、新型コロナウイルスが流行する直前の昨年末に、中高や小学校の先生方数名とフランス、ポーランドを訪問した時のことをお話ししたいと思います。</div>
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<div> 日本を出発したのは昨年の12月24日でした。旅行の目的は、暁の星が創立された頃のシスター方で、ただ一人ご存命のシスター・フランシスにお目にかかること、そして第二次世界大戦中に、莫大な人数のユダヤ人たちが殺された収容所のあるアウシュヴィッツを訪問することでした。</div>
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<div> パリ郊外の老人施設にシスター・フランシスはおられました。御歳なんと98歳。日本に来られたときは27歳だったとのこと。全く見知らぬ福山という土地で、言葉も通じないフランス人のシスターが学校を開校することの困難さは、容易に想像できるものがあるでしょう。<br />
しかしこのシスターが流暢な日本語で言われたのは、日本人、特に暁の星の先生方や保護者からの信頼と協力があったからこそ暁の星は成長できたのだと。視力が衰え、ぼんやりとしか見えない目で、「暁の星のために毎日祈っていますよ!」という力強い言葉に涙を流す先生もおられ、一同大いに勇気づけられました。</div>
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<div> アウシュヴィッツを訪問したのは12月29日。皆さんはアウシュビッツがどのようなところかを知っていますか。第二次世界大戦中にドイツ・ナチスはホロコーストと言われる大量殺戮により、全ヨーロッパで600万人と言われる民間人を殺しました。アウシュビッツはそのために作られた強制収容所の一つで、殺戮を主目的に作られたため、絶滅収容所とも呼ばれています。</div>
<div>氷点下で雪が舞い散るどんよりとした天候の中、現地の日本人ガイドに連れられて広大な収容所を見学しました。事前に本で勉強し、予想していたこととは全く違った重々しい空気に、言葉を発することができず、ガス室に送られた人々が身につけていた大量の遺品や、当時のまま残されている施設など、次から次へと現れる歴史の証拠品を目に焼き付けていくのが精一杯でした。アウシュビッツではたった3年の間に110万人もの人が殺されていったという事実は、人間がそこまで常軌を逸することがあることを認めざるを得ないものでした。</div>
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<div> こうした重々しい雰囲気に押しつぶされそうになった所でしたが、唯一人間の尊さと明るい希望を感じることができた場所がありました。 それは、自分はカトリックの神父だからと、見せしめとして餓死刑を命じられた人の身代わりを申し出たコルベ神父という方が、刑を執行された部屋の前に立ったときでした。罪なき人を無慈悲にも殺戮した人間がいた一方で、その対極にある人間としての尊厳を示した人もいたこと、そしてその方がカトリックの信仰を持っていたことは、暁の星がよって立つカトリックの価値観に、改めて希望と信頼を持つことができました。</div>
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<div> 今から70年前の暁の星創立当時のシスター方の崇高な情熱に触れ、またカトリックの聖人となったコルベ神父が、私たちに示した「他者のために生きる」姿勢にも感銘を受け、カトリック校の教職員として、その価値観を次世代を担う皆さんに伝えなければならない、と感じた9日間の旅でした。</div>
<div> </div>
<div> これで私の朝礼での話を終わります。</div>
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2020-02-29T00:00:00+09:00
【高校卒業式】理事長告辞
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=2624#block4151-2624
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<div>2020年2月29日(土)</div><div>福山暁の星女子高等学校 第66回 卒業証書授与式</div>
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2019-09-01T00:00:00+09:00
カトリック学校とのつながり
https://www.akenohoshi.ed.jp/publics/index/923/detail=1/b_id=4151/r_id=2626#block4151-2626
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<div> 今年の広島原爆祈念日の前後に行われた2019平和行事に、本校の中高生9名と一緒に参加しました。当日は広島・世界平和記念聖堂(カトリック幟町教会)に生徒と一緒にスクールバスで行き、パネルディスカッションと青年分科会に参加しました。青年分科会では、広島県内のカトリック学校やカトリック青年組織から、各自が体験したボランティア活動について報告があり、それぞれ松浦司教様(名古屋教区)との質疑が行われました。</div>
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<div> 今回参加して感銘を受けたのは、広島県にあるカトリック校の生徒たちが同じ課題に対して自らの体験に基づいて意見を述べ合い、平和や憲法に対しての認識を確かめ合うことができたことです。本校の生徒は大阪釜ヶ崎の路上生活者の方々との関わりの体験や日本国憲法との関わりを分かち合ってくれました。共通の理念を持つ広島県内のカトリック校(ノートルダム清心中高、広島学院中高、エリザベト音楽大学、福山暁の星女子中高)の生徒、学生たちが、単なる交歓ではなく意味のある交流ができたことは、次世代を担う青年が成長していく上で、とても貴重な機会であると感じました。</div>
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<div> 私たちは広島のカトリック校と深いところでつながっているんだという実感を本校の生徒たちも感じてくれたと思います。これからも本学院で学ぶ児童生徒の皆さんが、このような貴重な機会を活かして、「他者のために生きる」ことの意味を学んでくれればと望んでいます。</div>