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校長先生のお話

キリストの復活を目指して
2016-02-02
 今年の復活祭は、3月27日という早い時期にやってきます。去年は、ニュージーランドに出かけていましたが、今年はそういう訳にはいかないようです。
 
  いつも思うのですが、教会が一年に一度復活祭を祝い迎える意味について考えてしまいます。同時に自分は何のために生まれてきたのだろうか。生きると言う意味は何だろうかなどと考えるのです。復活したキリストの生涯を描いた聖書を読みながら、主日のミサの準備をしながら、一年に一度来る復活祭について考えている自分に気が付きます。日々の生活に追われてなかなかじっくりと考えることもできないのですが、司祭として説教を準備しながらこのことは避けては通れない厳然たる宗教的意味があると感じています。
 
  昔、公教要理と言ってカトリックの教えを本当に簡単にまとめたものがあり、その小冊子を全部暗記させられたことを覚えていますし、今もちゃんと記憶の中に残っています。そのことを考える時、宗教の持つ意義が、人間にとっては生きる意味、意義について全く独特の世界観を持っていることに気が付くのです。ユダヤ教から始まる「神様と人間との深い関わり」の結果、父である神は子であるイエス・キリストをこの世に遣わして、私たちの生きる本当の意味を教えて下さったのです。
 
  私たちがこの世に生まれ生きる本当の意味は、キリストと共に復活すると言う一点に集約されるのではないかと考えます。人間は、生まれてから死ぬまで幸せであると言う人もいませんが、生まれてから死ぬまで不幸だと言う人もいないのです。禍福あざなえる縄のごとくに人生が動いていることも知っています。お金や物や人間関係だけに幸せを求めていても、死ぬまでその執着だけは残るかもしれませんが、死ぬときは一人ですし、どんなにお金を貯めても棺の中に入れても燃やされるだけで、死んでからは何の役にも立たないのです。
 
  そうすると健康を保ち、できるだけ長生きをしたいと願うことばかりに力が入ってきます。それはそれで別の意味があるのかもしれません。しかし、永遠に生きることもできないのです。
 
  先日、ある介護施設で働かれている方とお話をさせていただいている中で、若い時からお金を貯めている人でも施設に入ると同時に、後見人である子どもたちにその管理が移って一銭も自分の自由にならなくなるそうです。
 
  でも多くの人は、一人になればその時役に立つのはお金だと信じて疑わないそうです。ですから、本来ならば施設ではお金は必要ないのですが、財布を渡さなければ大騒ぎをすると言うことで、財布とその中にはお金の大きさに切った新聞紙が入れてあると言う話を聞いたことがあります。また私自身東京にいた時に、カウンセラーとして行かせていただいていた埼玉県のある老人ホームでも同じことが行われていました。
 
  生きている時には生きていることしか考えませんから、老病死生についてはあまり深く考えないのです。それまでの自分の生き方の中で今日一日が平穏無事であればよいとだけ考えて生きていくと言うことになるのでしょう。
 
  ですがキリスト教の教えの中には、パウロのように「イエス・キリストの生き方に捉えられて」(フィリッピ書3章12節参照)という言葉や「キリストが私の内に生きておられる」(ガラテヤ書2章20節参照)というような言葉で表現されるキリストの教えとキリスト自身の生き方に人間としての最高の考え方、生き方を見出している人もいます。
 
  マザーテレサが「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、私にしてくれたことなのである」(マタイ福音書25章40節)この聖書の箇所に出会って、その言葉通りに生きようとしたことは、あまりにも有名ですが、その最後の目的は何だったのでしょうか。マタイ福音書の上述の箇所の前にこういう言葉が書かれています。「さあ、わたしの父に祝福された人たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている国を受け継ぎなさい。」(マタイ福音書26章34節)と言う言葉があります。
 
  パウロもマザーテレサも、この地上での生活での成功や名誉を最後の目的とはしていないのです。すべてこの地上での生活をキリストのみ言葉と行いに似せることしか天国に行く道はないのだと教えているかのようです。それが天国に復活すると言う意味なのだと思います。
 
  一年に一度迎える復活祭の意味を深く理解し、この地上での生活をどのような価値観で生きるかを深く考える四旬節でありたいと思います。そしてこの四旬節の中で、キリストの価値観に目覚めて、キリストの方向に心から向けなおす恵みと勇気が与えられることを願いたいと思います。一人でも多くの人が悩みや苦しみの中から、人間として最高の生き方とは何かを考える時になってくれたらと思います。
 
校長 山口道晴
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