校長先生のお話

第六十四回 卒業証書授与式 式辞
2018-03-02
 桜凜会の皆さん,卒業おめでとうございます。先程,一人ひとりに卒業証書を授与いたしました。今日は,思い出の校舎と別れを告げ,新たなる扉を開き,新たなる世界への旅立ちの日です。皆さんの胸中は,歌の言葉を借りれば,まさに,「同じカバンに詰め込んだ日々と並べた机に刻んだ日々」が走馬灯のように巡っていることでしょう。
 保護者の皆様,お嬢様方のご卒業おめでとうございます。今日まで,お嬢様を本校の教育に託して頂きましたことに深く感謝申し上げます。これまでの様々なご苦労や思い,そして,お支え頂いたことが去来し,本日のお嬢様方の姿に感慨一入のことと存じ上げます。
 昨年,帰天しましたシスター・テレジタ石井も,皆さんの本日の成長した姿を空から見て,満面の笑みを浮かべながら祝福していることでしょう。
 卒業する桜凜会の皆さんは,桜が咲き誇る四月の入学式に教室で出会った友と,多くの貴重な学習や体験を積み重ねてきました。カナダへの修学旅行・運動会・クラスマッチ・文化祭・遠足・坐禅静修会などの学校行事,そして,本校独自の記念祭バザーや聖母祭・追悼式・待降節・クリスマス会・奉仕活動・魂結び・光の伝達式など多岐にわたる活動を通して,本校を巣立っていく生徒に望む具体的な姿である「豊かなかかわりを築いていく力」や「奉仕する心と実践する力」を確実に体得してくれました。
 私は,皆さんと過ごした日々は,わずか一年でしたが,皆さんの日々の姿から,こうした本校の歴史と伝統が培ってきた心を強く感じていました。
 いつも活き活きと桜の坂道を登校してくる姿は,凜としておりとても印象的でした。こうしたことから,皆さんの卒業名は「桜凜会」と命名しました。
 その頼もしい姿に私自身,いつも勇気づけられ元気をもらってきました。本当にありがとう。これからは,本校の卒業生として,如何なく力を発揮し活躍してくれることでしょう。
 さて,今年は,先月25日まで平昌オリンピックが開催されました。
 日本選手は、4個の金を含む冬季オリンピック最多の13個のメダルを獲得するなど,素晴らしい活躍で多くの人に感動と夢や希望を与えてくれました。
 スピードスケートの高木美帆選手は,パシュート団体で金,1500mで銀,1000mで銅,3000mで5位という素晴らしい成績を残してくれました。高木選手は,8年前のバンクーバーオリンピックで僅か15歳で,期待の星として代表に選ばれました。結果は,1000m最下位,1500m23位と大変不本意なもので大きな挫折を味わいました。そこから,なかなか立ち直れず,四年前のソチオリンピックでは代表に入ることさえできませんでした。それでも,夢を捨てず練習を積み重ねた末につかんだ三色のメダル,まさに,「艱難汝を玉にす」という格言を体現したものであり見事な活躍ぶりでした。
 また,男子フィギアスケートの羽生選手は,66年ぶりの五輪二連覇の快挙を遂げました。昨年11月に右足首の靱帯を損傷し,オリンピック出場さえ危ぶまれた中,絶体絶命の苦境を一途な思いとたゆまぬ努力ではねのけ,まさに,世界の人々を魅了させた華麗なる圧巻の演技で栄光を勝ち取りました。演技終了後「頑張ってくれた右足に感謝したい」とひざまづいて負傷した右足首に触れた姿も印象的で,海外メディアも絶賛していました。右足を支えた不屈の精神にも驚嘆させられます。
 羽生選手は,2011年3月11日,仙台市で練習中に東日本大震災に遭遇し,避難生活も余儀なくされ,リンクも失いました。その時,人間の無力さ,街が崩壊する悔しさを痛感し,スケートをしていていいのか,スケートを辞めようと思い悩んだそうです。それでも,自分にできることはスケートだけだ。一生懸命の姿を見せて,少しでも多くの人に勇気を与えられればいいと考え,スケートを再開しました。震災三年後,19歳でソチオリンピックに初出場し,見事金メダルに輝き,被災地の皆さんを勇気づけました。
 その後,幾度ものけがを乗り越え,常に世界のトップ選手として好成績を挙げていましたが,今回ばかりは,大会直前のけが,そして,ジャンプのカギを握る右足首靱帯の損傷ということもあり,出場そのものも危ぶまれていました。痛み止めなしには,ジャンプを跳んだり降りたりすることができない中で,今の自分にできる演技構成を模索し,見事に演じ切っての金メダル。今も不安な日々を過ごされている被災地の皆さんから,「励まされた。私もしっかりと生活を再建したい」「本当に素晴らしい。私も背中をおしてもらった」と称賛の声が上がるとともに笑顔と勇気を与えてくれました。
 「けがばっかりで,スケートができなくなるんじゃないかと不安な日々が続いた。でも,それだけ勇気を持って恐れずにチャレンジしてきたからだと思った。だから,こうやって真ん中の場所に座れるのは最高の瞬間」とのコメントにも,幾たびも苦境を乗り越えてきた不屈の強い精神力とチャレンジ精神が表れており,学ぶべき点が多々あります。
 さて,現在,我が国は,世界に類のない急速な少子高齢化社会を迎えるとともに,AIやIoTが人間の予測を超えて加速度的に進展するようになってきており,産業構造や就業構造の転換等への対応が求められています。
 また,国内では,毎年のように予期せぬ地震や噴火・豪雨等による自然災害が発生し、尊い命が失われるとともに甚大な被害をもたらしています。国際的には,紛争や核ミサイル実験等が繰り返されており,こうした状況に対し,フランシスコ・ローマ法王は,「人類は教訓を学んでいないし学びたいと思っていないようだ」「戦争は改心せず愚かな傲慢の最も明白な表徴」と述べられるなど,世界各地の緊張状態に憂慮されています。
 このように,これからの時代は,大変予測が困難で混沌とした時代になると言われていますが,次代を担う桜凜会の皆さんは,先程の高木・羽生両選手のように,挫折感を味わったり困難な場面に遭遇したりしても,常に前を向いて歩み続けてください。そして,これまで培ってきた愛と奉仕の心や平和を希求する心を持ち続け逞しく生き抜いて行ってください。
 聖書のテサロニケ第十四章に,次のような教えがあります。
 あなたがたは,神に喜ばれるためにどのように歩むべきかを,わたしたちから学びました。そして,現にそのように歩んでいますが,どうか,その歩みを今後も更に続けてください。
 また,昨年百五歳で帰天された日野原重明さんは,晩年「感謝に満ちた気持ちでキープオンゴーイング。さらに,前進また前進を私たちは続けなくちゃならない。喜びと感謝でキープオンゴーイング」と語っておられます。
 古くから,花といえば桜をさすことが多いように,あなた方も,本校の卒業生といえば「桜凜会」といわれるように,これからも,かけがえのない命を大切にしながら,しっかり前を向いて歩み続けてください。そして,輝き続けてください。
 最後に,永六輔さんの詞を紹介しておきます。
 
 生きているということは 誰かに借りをつくること
 生きているということは その借りを返していくこと
 誰かに借りたなら 誰かに返そう
 誰かにそうしてもらったように 誰かにそうしてあげよう
 
 これまで惜しみない愛情を注いでくれた家族に,そして,多くの借りをつくっている家族に必ず恩返しという形でお返ししてください。
 あなた方の前途が,幸多きことを祈念しています。